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「困った!どうしよう?」は学びのチャンス|「街の魅力をPR動画で発信しよう!」クリエイター×学校教育プロジェクト vol.4

初島の児童生徒と一緒につくりあげる「街の魅力をPR動画で発信しよう!」プロジェクト。日頃から動画に慣れ親しんでいる子どもたちとはいえ、自分で動画の企画をつくり、撮影し、編集するのは初めての子がほとんどです。いろいろな場面で困難にぶつかりながら、一つひとつ解決していく姿が見られました。そんな試行錯誤も、ものづくりには大切なこと。vol.4では、子どもたちが動画をつくりあげていくまでのプロセスを追います。

「絵コンテ」って難しい?アイディアを形にする苦しみと喜び

これまでに、街の魅力を洗い出したり(vol.1記事リンク)、島内をフィールドワークをしたり、動画の企画案を考えたり(vol.3記事リンク)と順調に活動を進めてきた子どもたち。第4回の授業では、おぼろげに見えてきた動画のアイディアを、「絵コンテ」の形にまとめていきました。

第4回の授業は、クリエイターではなく、ワークシートをもとに担任の先生が主導して進める時間です。第3回の授業のときに池辺さんから、実際の動画制作で使う絵コンテの本物を見せてもらっていた子どもたち。絵コンテの型は理解していたものの、いざ描こうとすると、なかなか鉛筆が進みません。どうやら、頭の中にはいろいろなアイディアが浮かんでいるのに、どこからどんなふうに紙の上に表現していったらいいのか分からず困っている様子。中学校担任の塩澤先生も、教室で絵コンテを書くという今までにない活動に、少し心配そうに見守っています。
「自分の中にあるものを全部出すのは大事なこと。今日はしっかり時間をかけよう」と塩澤先生。やがて、少しずつ子どもたちの鉛筆が動き始めました。

「プロのカメラマンさんに聞いてみよう」。臨機応変に学びが生まれる

苦労しながら絵コンテのナレーション部分を書き上げた子どもたち。内容を確認していた先生が、「これで合っているか、見てもらってもいいですか?」と、私たちクリエイターチームのところへやってきました。ちょうどその日、中学生の授業の様子を撮影するため、カメラマンの高橋さんが参加していました。「もちろん!ぜひ見せてください」と高橋さん。
「せっかくプロのカメラマンさんが来てくれているから、みんなの絵コンテを見てもらおう」との先生の声に、子どもたちは高橋さんの元へ。

「ここのところ、すごくいいと思う」「ここの場面はもう少し最初に出した方が面白いかもしれないよ」

高橋さんからの具体的なアドバイスを受け、子どもたちはさらに自分の絵コンテをブラッシュアップしていきました。最終的には時間が足りないほどの勢いで書き続けて、これから撮影する動画の元となる絵コンテが無事完成しました。

予想通りに行かないときにどうするか

さて、いよいよ撮影です!iPadを手に、先生と一緒に思いおもいの場所へ向かった子どもたち。ところが、撮影しているうちに、あることに気づきました。

「この絵コンテ、実際にどうやって撮ったらいいんだろう・・・?」

ここまで、「こんな映像を撮りたい!」といろいろなアイディアを目いっぱい絵コンテに書き出してきましたが、実際に撮るとなると難しいものがたくさんあります。

「灯台の光を撮りたいけど、夜は一人じゃ行けないよ」
「この花、いまの季節には咲いてなかった!」
「海の中で魚が泳いでいるところって、どうやって撮ったらいいんだろう」
「船から見た島の風景を撮りたいけど、船に乗って帰って来るには時間が足りない」

季節や時間帯が合わなかったり、子どもひとりでは行けない場所だったり、技術的に自分では撮るのが難しかったりと、さまざまな制約があることに、子どもたちは気づき始めました。

困ったら、他の誰かに頼ってみよう

子どもたちは、この難問をどんなふうに解決していったのでしょうか。
小学校担任の鈴木先生に、授業を振り返っていただきました。

「僕自身も、児童の絵コンテを見て『え、それって撮れるのかな?』って思ったところはけっこうありましたね。ただ、やってみる前に『無理じゃない?』とは言いたくなかったので、どうしたら撮れるかを、一緒に考えていきました」

と先生。

解決策を考えるなかで、子どもたちは、

「海中の映像、ダイビングセンターの人に聞いてみたらいいかもしれない!」
「夜の灯台は、おうちの人に頼んで一緒に行ってもらおう」

と、自分以外の人の力を借りることを考えつきました。また、どうしても現場で映像が撮れなかったものについては自分でイラストを描いたり、写真を使うなどの工夫も子どもたちの中から生まれてきました。

ものづくりをする上で必ずと言っていいほど直面する「予想通りにいかない」という壁。今回のプロジェクトでは、企画段階からそこに向き合う体験を大切にしたいと考えていました。大人としてはついつい先回りしてしまいたくなりそうですが、そこをあえて抑えて、先生方は、子どもたちの体験を尊重し、見守ってくださいました。結果として最後まで誰ひとりあきらめることなく、周りの人の協力も得ながら、見事に自分なりの形にしていった初島の子どもたち。ものをつくることの大変さと面白さを、感じてもらえたのではないでしょうか。

次回はいよいよ動画のお披露目!約半年の活動の末に、どんな動画が完成したのでしょうか。また、子どもたちの目に、この取り組みはどう映っていたのでしょうか。動画のお披露目が行われた学校の文化祭の内容を中心にお伝えします。

※本記事アップ時点での内容となります。法律や手続き方法、名称などは変更されている可能性があります。

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