先生やクリエイターが子どもたちに手渡したかったこと|MCP -函南町立桑村小学校編- vol.8

Movie Communication Program(MCP)は、プロの知見を集めたカリキュラムに沿って学校の先生方が授業を行い、専門的な指導が必要な授業の部分はクリエイターが講師として登壇するという、学校の先生×クリエイターの協働的なスタイルで行われます。半年間の取り組みの様子や成果について、学校の先生、クリエイター双方の視点から語っていただきました。

試行錯誤によって主体性が育まれた

小学校6年生の担任として、児童の動画制作に伴走してくださった大島先生と露木先生。チーム担任制の下で、子どもたちの相談に乗ったり、完成までのスケジュール進行をマネジメントしたりと、子どもたちに寄り添いながら、一緒に取り組んでくださいました。

大島先生:
子どもたちは、普段からYouTubeに親しんでいます。そこに自分たちが動画を載せるとなったときに、日頃楽しんでいるコンテンツの裏に、制作者さんたちの努力やさまざまな配慮があることを知って、自分たちの表現力や発信力につなげられるんじゃないかという期待がありました。その一方で、いろいろな人の目に触れるということをどこまで子どもたちが理解できるかな、という懸念もありました。

露木先生:
中学校に上がると一気に大きな集団の中に入っていく子どもたちにとって、今回のプログラムが、自分の思いや地域のよさを言葉や映像で表現し、たくさんの人とつながっている実感をもてる機会になれば、という期待がありました。一方で、子どもたちがどこまで主体的に取り組みきれるか、という懸念もありました。
実際に始まってみると、動画のテーマを決める時間がいちばんの山でした。テーマがなかなか決まらなかったり、途中で二転三転して撮影をし直すことになったりと、子どもたちはかなり試行錯誤していました。うまくいかないことが起きるたびに、「どうすればいいか」と考え、子どもたちの動きも主体的になっていったように感じています。

実体験を通じてスキルやリテラシーを身につけた

大島先生:
たとえば、ある児童はAIでナレーションを入れてみたらイメージと違ったらしく、「自分の動画にはAIよりも人の温かみのある声のほうが良い」と考えて、最終的に1年生に声の協力をしてもらう、というアイディアに辿り着きました。また、ある子は撮影許可を取るために、地域の施設に自分で電話する、という体験をしました。一本の動画をつくるのに、どれだけの時間がかかるのか、また、多くの人や企業とやりとりをしなければならないかを実感できたことも、とても大きな学びだったと思います。

また、今回、自分の作った動画を何度も見直し、アドバイスをもらい、もう一度編集し直すという作業を繰り返して、粘り強く取り組めたのもよかったです。さっと作って終わり、ではなく、自分の表現を推敲し、よりよいものを作ろうと工夫してやり切る力が身についたのではないかと思っています。いま修学旅行のまとめを作っているんですが、それもみんなCanva(オンラインデザインツール)で作りたいって言い出しています(笑)。

露木先生:
情報モラルの面では、YouTube や TikTok など、今の子どもたちが実際に使っているサービスに即した、最新のネットリテラシーをプロの先生から学べたことがとてもありがたかったです。また、学校の外で映像や発信を仕事にしている大人と関わったことで、「世の中にはこんな仕事や生き方があるんだ」という職業観も広がったのではないかと感じています。

クラスの中で、完成したお互いの動画を見合い、「そこいいね」「上手だね」とコメントし合う姿が生まれてきて、ともすれば仲間同士で牽制しあうこともある年頃の子たちにとって、作品を通して互いのよさを認め合う時間になったと感じています。卒業に向けた行事や下級生への発信の場でも、今回学んだ編集の視点や Canva などの表現手段を生かしていければと思っています。

粘り強く取り組んだ作品を、誇らしげに見せてくれた

今回のプログラムをご相談したときに、「ぜひやってみたい」と快諾くださった関口校長先生。今年度の学校教育活動のテーマが「表現力」だったこともあり、動画制作プロジェクトに全面的にご協力いただきました。

関口校長先生:
小学生は、どうしても自分たちの学校や地域を当たり前のものとして見ていて、「この学校の良さは?」と聞いても、自然が豊か、といった答えになりがちです。今回の取り組みでは、「それを外の人が見たらどう感じるだろう」「どんな情報が新鮮なんだろう」と立ち止まって考える時間が持てたことが、とても大事な体験になったと思っています。本校は小規模校でもあり、普段はなかなか外の視点に触れる機会が少ないのですが、その分、他者の目を意識するという経験自体が、子どもたちにとって新鮮だったのではないでしょうか。

もう一つ感じているのは、たとえ短い動画でも、一本の作品を仕上げるまでには本当にいろいろな工程がある、ということを子どもたち自身が実感できた点です。撮って終わりではなく、考えて、直して、また見直していく積み重ねを経て完成したものは、「自分の作品」としての面白さや愛着につながったと思います。完成した動画を誇らしそうに見せる姿を見て、ものづくりに向き合う良い体験になったのではないかと感じました。

こうした視点や経験は、一度で身につくものではありません。今回の体験をベースに、これから先、学習や行事の中で「あのとき、こうやって考えたよね」と振り返りながら学習を積み重ねていければと考えています。

固定観念にとらわれない、自由な表現に触れた

第3回の授業「動画づくりに必要なことを知ろう」で、動画の企画、撮影、編集の仕方を教えてくれた動画クリエイターの池辺さん。その後も教室を訪れて、子どもたちのサポートをしてくださいました。

池辺さん:
今回の授業でまず大事にしたかったのは、「一人よがりな動画にしない」ということでした。動画は何でも伝えられる分、どうしてもあれもこれも詰め込みたくなってしまいます。でも本当は、誰に向けて、何を一番伝えたいのかをはっきりさせた方が、結果的に多くの人に届く。その考え方を、できるだけ最初の段階で子どもたちに渡したいと思っていました。

中学生になればスマホを持ち、ほとんどの子が何かしら動画に触れるようになります。そのときに、「誰に向けて何を伝えるか」という問いがふっと頭に浮かんでくれたら、それだけで十分価値があります。動画の閲覧数が伸びるかどうか、バズるかどうか以上に、考え方の原点を伝えたいという思いで関わっていました。

子どもたちの動画を見て感じたのは、表現の幅がとても広かったことです。今回は Canva(オンラインデザインツール) を使ったことで、テンプレートの素材を上手に組み合わせながら、とてもリッチな表現に仕上げた子が何人もいました。既にあるものを上手に生かすというのは、クリエイティブとしてもとても大切な感覚ですが、それを子どもたちは自然に掴んでいたように思います。これは僕自身にとっても新しい発見でした。

今回は「学校」という身近な場をテーマとしていましたが、出来上がった11本はすべて内容が違っていました。それは、それぞれが自分なりの切り口を見つけていたということです。話を聞かせてもらうと、なぜその切り口を選んだのかも、子どもたちの中にちゃんと理由があるんですよね。子どもたちの潜在的な感性や創造性に、僕自身がたくさん刺激をもらいました。

また、子どもたちにどうしても伝えておきたかったのがネットリテラシーの話です。動画を作る楽しさを覚えたら、必ずどこかで調子に乗ってしまう時期が来ます。だからこそ、大きな失敗になる前に「これは危ない」「ここは一線を越える」という感覚を持っておくことが大切だと思っています。失敗自体をゼロにはできませんが、学校や家庭で叱られる程度で立ち止まれるかどうかは、事前に知っているかどうかで大きく違うはずです。

今回の授業を通して、発信する面白さと同時に、その責任や怖さにも少し触れられたのであれば、それはすごく意味のあることです。子どもたちの表現力は、正直、僕ら大人の想像をもう超えています。だからこそ、これからも「どう伸ばしていくか」「どう守っていくか」を、学校や大人と一緒に考えていけたらと思っています。


MCPにあなたも参加してみませんか?

SHOOTESTでは、クリエイティブの力を社会に生かす「学校×地域」プロジェクトを今後も実施予定です。「参加してみたい!」というクリエイターの皆さん、「うちの学校や団体・組織でやってみたい!」という方は、ぜひ下記まで気軽にお問合せください。

プログラムの内容や魅力を伝えるプレセミナー

1回の授業時間を想定し、約45分程度で構成されています。本プログラム(約8回、16時間程度/カスタマイズ可能)の導入前に、一度お話しを聞いてみたいと思われた学校や団体のみなさまは、ぜひ下記まで気軽にご相談くださいませ。

==============
お問い合わせ先
SHOOTEST CIRCLE 運営事務局
メールアドレス:info@shootest.jp
==============

※本記事アップ時点での内容となります。法律や手続き方法、名称などは変更されている可能性があります。

関連記事