専門家インタビュー:弁護士
自分の作品を守るために。クリエイターが知っておくべき著作権の基礎知識vol.1
デザインしたり、イラストを描いたり。クリエイターとして日々、制作物を創造していると必ず出てくるのが「著作権」の問題です。
当然、著作権は自分にあると思っていたら、実は著作権を譲渡すると記された契約書にサインをしていた……なんてことがあるかもしれません。
クリエイターにとって大切な著作権について、弁護士の河野冬樹先生にお話を伺いました。
専門家プロフィール
河野冬樹 Fuyuki Kawano/弁護士
本好きが高じて学生時代より出版関係に関わった経験を持ち、著作権関連法務、個人事業主向け法務が専門。「出る杭のちからになりたい」をキーワードに、創作活動をされる方の支援を行っている。第一東京弁護士会所属。法律事務所アルシエン弁護士。
目次
著作権は誰にある?
クリエイターとして一番大事な、作ったものの権利は誰のもの?というところから教えてください。
商業デザイナーはクライアントのオーダーを受けて作りますが、著作権は基本的には作った人にありますよね。ただし、契約書などに著作権を譲渡する契約が盛り込まれている場合はクライアントに著作権が移る、という理解であっていますか?
おっしゃる通りです。著作権という名前がついているくらいですから、基本的には作った人に権利があります。
それを譲渡したり、許諾することで、クライアントが使うことができる、というのが原則です。
最近、実際には譲渡の必要がないのにクライアント側が譲渡を求めるケースがある、という話を聞くのですが。
それについては著作権の問題というよりも、下請法の話になります。例えば、必要もないのに権利譲渡を求め「応じなければ今後もう発注しない」と迫ったりするのは、独占禁止法の違反に当たるのではないかと、経済産業省が出したガイドラインの中で指摘されています。
契約をする段階で、本当に著作権を譲渡したり、許諾する必要があるのか、しっかり見ないといけないと思います。
会社員として作った物はどうなる?
では、会社員として作ったものの著作権は会社のものになりますか?
これは職務著作といわれるもので、法人の名前で発表するものは基本的に法人に著作権があります。
私も司法試験予備校でアルバイトをしていたことがありますが、そこで私が模擬試験の問題や解説を作ったとします。作っているのが私である以上著作権は私になるという考え方もできますが、いちいち譲渡だのなんだとやるのはおかしいですよね。
そもそも、会社から給料をもらって就業時間の中で作っていますしね。
そして、法人の指示に従ってやっているものですからね。
なので、法人の指示で従業員が作るものは法人著作になります。最近では、その扱いを就業規則に定める場合が増えてきた様ですね。
青色発光ダイオードなど、話題になったものもありましたよね。
あれは著作権ではなく特許権の話ですね。
会社に特許権があるけれど、発明した社員にいくら払うべきなのかという議論でした。社会的にも話題になりましたけど、著作権を巡ってはそこまでの問題は起こってないようですね。
著作権は、創作性を発揮している側にある
クリエイターが著作権を争って話題になったものはありますか?
たくさんありますよ。無断転載に対して争ったりとか、自分が出した本の内容が後になって変えられた、とか。
揉めるのは、著作権がクリエイターにあるかどうか、という点についてなんですよね。極端な話「ここの色はこうして」と細かいところまですべて指示を受けてその通りに作っていたら、どうでしょうか。
著作権は、創作性を発揮している側にありますから。
では、例えばこのインタビューが記事になったら、誰の著作物になりますか。
基本的には、話し手のしゃべっている内容が著作物になると思うんですが、インタビューの内容を大幅に編集して1冊の本にまとめる場合は、ライターさんに著作権があると思うんです。しゃべった内容をただ文字起こししただけなら、話し手に著作権が残ると思います。
その線引きはどの辺にあるのでしょう。
要は、その内容の表現を誰が作っているのか、創作性を発揮したのは誰なのか、というところですね。
創作性を発揮した人に、著作権があると。しっかりと覚えておきます。
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次回は、10/20(水)公開予定です。制作の過程でよくあるクライアントとのやり取りについてお聞きします。「え?そう言いましたよね?」という、言った言わないの揉め事を避けるためにやっておきたいことや、著作者人格権についても引き続き弁護士の河野冬樹先生に教えて頂きました。続きをお楽しみに。
※本記事アップ時点での内容となります。法律や手続き方法、名称などは変更されている可能性があります。