専門家インタビュー:税理士
消費税、納入方法を知っていますか?目からウロコのインボイス制度解説vol.3
vol.1、vol.2では、「インボイス制度」とは何なのかを知り、フリーランスのクリエイターは、クライアントから仕事を発注してもらうためには適格請求書(インボイス)の発行業者として登録した方がいい、というところまで分かりました。
今回は、具体的な登録申請のスケジュールや、登録後の消費税の納入の仕方まで具体的に教えていただきます。
専門家プロフィール
吉岡俊哉 Shunya Yoshioka/税理士
新卒でコンサルティング会社・税理士法人へ入社し、中小企業の税務顧問・事業継承案件・相続案件を中心に従事。メガバンクに出向後、2013年に税理士登録。2017年に独立し、税理士法人THREE設立。
目次
知っておきたいインボイス制度登録の流れ
これまでのお話で、インボイス制度に登録する覚悟はできました。実際の登録手続きについて教えてください。
制度が始まるのが2023年10月1日です。あと1年半以上ありますが、2023年3月31日までに登録の手続きをする必要があります。
免税事業者の方はまず、課税事業者選択届出書を提出します。これは「課税事業者になります」という手続きです。さらに、インボイス発行事業者の登録申請書を出して、登録番号を発行してもらいます。
二つの手続きが必要ということですね。
ただし経過措置があって、2023年12月31日までに登録する場合は、インボイス発行事業者として登録するだけで、自動的に課税事業者になることができます。
早めに登録しても、2023年9月末までは免税事業者のままなので安心してください。
課税事業者の場合はどうなりますか?
インボイス発行事業者の登録を申請すればいいだけなので簡単です。
課税事業者が、インボイス制度の登録はしない、という選択肢もありますか?
一般消費者のみを相手とする課税事業者で、法人との取引がないところは別にやらなくてもいいのかな、と思いますが、そういう方は相当少ないと思います。
ちなみに、インボイス制度は一度登録したらやめられないですか?
やめることはできます。免税事業者に戻った方がメリットがあるなと思えば、登録解除の手続きをすればできます。
ただそれは、益税がほしいですと言うようなものなので、なかなか大きい声では言えないかもしれないですね。
消費税、待っていても納付書は届かない!
最終的に、消費税はどうやって納めるのでしょうか。
確定申告書を作成すると、納入する消費税額も算出されるので、所得税と同じように納付書を作成して、銀行に行って納めます。
確定申告したら、コンビニで納められる納付書が届くのですよね?
いえ、自分で納付書を自分で作成して納めることになっていますね。
前、納付書が届いてから払ったんですけど。
とすると、そこには延滞料金も含まれていませんでしたか。
確かに延滞税がついていました。まさか、消費税は自分から積極的に納入しなければならないのですか!?
税金は請求がきたら払えばいいという感覚がありました。
3月の確定申告の時は、自分で納付書を作って納めると覚えておいてください。
申告だけでなく、納税も所得税は3月15日まで、消費税は3月31日までです。
もしくは口座から自動で引き落とす「振替納税」も可能ですので検討しても良いかと思います。
えー! だったら確定申告という名前を確定申告納税に変えた方がいいですよ!
フリーランス10期目なのに、全然知らなかったです(苦笑)
ちなみに、2期前の課税売上が5,000万円以下の課税事業者の場合、課税方式が簡易課税と原則課税の二種類から選べます。
原則課税の場合、受け取った消費税から、実際に支払った消費税を差し引いて納税します。
簡易課税の場合は、受け取った消費税に一定の割合をかけた額を納税します。
業種によって何%をかけるかが変わり、クリエイターは50%なので、仕入税額控除の対象となる経費が50%より多いのであれば原則課税の方がいいでしょう。
50%より少ないのであれば、実際よりも多くの消費税を差し引くことができるので、簡易課税がいいですね。
面倒くさいのが嫌であれば、多少は損をするかもしれませんが、簡易課税の方が圧倒的に楽です。
損得ではなく、取引条件の一つになる
最後に、今すぐインボイス発行事業者の登録申請をするメリットを教えてください。
登録し忘れることがない、ですかね(笑) 2021年10月からすでに申請が始まっていて、初月で10万件の申請があったそうです。
企業であれば、2023年10月に実際に制度がスタートする前に取引相手に登録番号を聞いたり、体制を整える必要がありますからね。
取引先に「◎月の請求書から登録番号を記載してください」等と周知も進めると思います。
だからこそ「インボイスの登録番号ありますか?」と確認された時に、「はい、あります」と答えることができれば、「あ、この人はしっかりしているな」という印象も与えると思います。
いまやって損することはないから、早めにやっておきましょう! と言うことですね。
インボイス制度は、乗っかった方が得か損か、という話ではなく、取引してもらえるかしてもらえないか、ぐらいの根幹の制度になってくることがよくわかりました!
損得ではなく、取引条件の一つになってくるかもしれないですね。
ありがとうございました! 実際に申請書を書く際にわからないことが出てきそうなので、ぜひクリエイター向けに登録申請書の書き方講座も開催してもらえると嬉しいです。
ご検討お願いします。
※本記事アップ時点での内容となります。法律や手続き方法、名称などは変更されている可能性があります。