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専門家インタビュー:弁護士

法律は、弱い人の味方をしてくれる!?契約にまつわる法律の基礎知識vol.3

フリーランスが知って起きたい法律の基礎知識について、弁護士の日高義允先生に聞くインタビューも今回が最終回。最後は「法律は、弱いものの味方じゃないの?」という疑問に踏み込んでいきます。
こんなはずじゃなかった、いざという時どうすればいい?という突然のトラブルの時の対応についてもお伺いしました。

専門家プロフィール
日高義允 Yoshichika Hidaka/弁護士
大学時代、IT分野で起業した友人が法的リスクを乗り越えられず失敗した経験から、システム・アプリ開発等のIT分野に強く、民事と刑事の両分野で経営者を支える弁護士を志す。単なる代理人や法律屋に止まらず、お客様の拠り所になれる「弁護士以上の存在」でありたいと願う。法律事務所アルシエン弁護士。


仲間と一緒に会社を立ち上げる。大切なことは?

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高橋遼さん

フリーランスとして経験を積んできたので、そろそろ法人化も考えています。
仲間と一緒に会社を立ち上げる場合、後で揉めたという話をよく聞くので、特に注意したい点や失敗しないためのコツがあったら教えてください。


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日高弁護士

設立時に、事業がうまくいかなくなった時にどうするかまで考えておきたいですね。でも、設立時に失敗することを考える人は少ないですよね(笑) 
まず、株式会社だと株の持ち分で発言権利が変わってきます。もし自分のアイデアで会社を作るのであれば、最低、100株中の51株を自分が持っておくべきです。本当は、3分の2を超えた方がいいんですけどね。


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高橋遼さん

なるほど。契約書とかを作っておいた方がいいのでしょうか。


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日高弁護士

例えば、3分の1の株式を持っている相手がケンカして会社を出ていくことになった時、「この事業は今後伸びるかもしれないから、株式は持っておく」と言い出すこともありえます。そんな時のために、例えば最初の出資金の額で買い戻すとか、その時点の簿価で買い戻すことができる、という契約書を交わしておいた方がいいですね。


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高橋遼さん

おっしゃっていることはなんとなくわかるのですが、素人だと具体的に何を決めておけばいいのか分からないです。


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日高弁護士

ここはすごく専門知識が必要なので、弁護士などに相談した方がいいと思います。

不可抗力な事態に備えてできること

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高橋遼さん

話は変わりますが、納品物に関わるトラブルについて聞かせてください。例えば撮影データを損失して納品できなくなったなど、フリーランスが損害賠償請求を受けそうな場合の対応を教えてください。


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日高弁護士

まず基本的に、受注した側は納品の義務を負っているので、不可抗力でもない限り、どんな事情があっても納品しないといけません。


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高橋遼さん

なるほど。例えば、モデルを手配して、撮影場所も借りていたとします。でもその日、僕の都合で撮影できなかったら、そこにかかったコストも弁済することになりますか。


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日高弁護士

基本的には払うことになると思います。あくまでも納品の義務があり、その義務を果たすために必要な費用は払わないといけない、ということです。


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高橋遼さん

なぜこの質問をしたかというと、コロナ禍で一度、撮影現場で検温したら、基準の体温より高くて現場に入れなかったことがあったんです。たまたま別のカメラマンが見つかったので良かったのですが、こういう時はどういう扱いになりますか。


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日高弁護士

明日地震があったらどうなるのか、というのも同じですが、不可抗力かどうかが重要です。そして、何が不可抗力に当たるのか、契約書に書いておかないとダメですね。コロナが不可抗力に当たるかは考え方が分かれるので、契約書ごとに決める必要があります。


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高橋遼さん

なるほど。その他、フリーランス同士の仕事で、相手のミスで自分の機材が故障した場合の対応についても教えてください。


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日高弁護士

交通事故が起こると、警察が現場検証をしますよね。同じように、本人同士で冷静に状況を確認して、記録を作り、お互いサインしておくといいと思います。具体的な見取り図を作って、ここにヒジを引っ掛けて落としてしまったとか、起こった事実を書いておくといいですね。


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高橋遼さん

裁判で争うことになった時に、その記録があると客観的に判断できる、ということですね。


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日高弁護士

そもそも事実が定まらないと、解決のプロセスに入れません。ですから、記録をとるクセをつけることは大事です。記録がないと解決が難しくなる、と覚えておいてください。

法律は弱い人の味方か

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高橋遼さん

最後に、クライアントから対価を支払ってもらえない場合、どうすればいいか教えてください。


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日高弁護士

もし、「納品した物に問題があるから支払わない」という理由であるならば、直すしかないですよね。でも、そうでないならば相手に支払うお金がない可能性があります。
僕は支払い側の相談も受けるのでわかるのですが、資金繰りが苦しい場合、誰から支払うか、優先順位をつけるんです。一番最初に社員への給料を支払い、銀行への返済をした後、うるさい会社から支払う……というように。なので、支払ってもらえない時は、優先順位が低い、つまり低く見られていると考えられます。


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高橋遼さん

要は相手に舐められないようにしなさい、ということですね。


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日高弁護士

会社に押しかけてくるような人は、面倒臭いから優先順位が高いんですよ。逆に信頼関係があるからこそ、「あそこは待ってくれるに違いない」と思われたりもします。


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高橋遼さん

僕は支払いが遅れているクライアントには、「経理担当者が『入金がない』って言ってるんですよ」と、経理担当者の言葉として伝えてます。「俺はいいっすけどね」なんて言いながら(笑)。


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日高弁護士

フリーランスの方はそういう時のために、経理用のメールアカウントを作っておくのもいいですね。


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高橋遼さん

「対価が支払われなかったり、訴えられたりした時、フリーランスである自分たちは弱い立場だから、きっと法律が守ってくれるはず。その方法を教えてもらおう」ぐらいの気持ちで日高先生の話を聞きに来ましたが、ちょっと違いましたね。
フリーランスの人たちが抱きがちなある種の“被害者意識”も変えていく必要があるのかなと思いました。


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日高弁護士

法律は弱い人の味方ではなく、誠実な人の味方です。誠実に記録を残して、誠実に仕事をした人の味方なんです。
今回、フリーランスの方にとって厳しいと感じるお話もあったかもしれませんが、クライアント企業と堂々と交渉して、より良い仕事をして欲しいという気持ちからいろいろお話しさせてもらいました。


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高橋遼さん

自分たちのマインドセットから変えなければいけないと思い知らされました。フリーランスとして責任を持ってやってるんだから、知識をつけ、自ら交渉しないとだめですね。勉強になりました!

※本記事アップ時点での内容となります。法律や手続き方法、名称などは変更されている可能性があります。

1988年生まれ。2011年に独立、最先端技術からアナログ技術を結ぶクリエイティブを提案。CM、MVなどの商業映像を始め、シネマティックな世界観での映像表現を追求。海外のフィルムフェスティバルでの受賞など、映像作家としても活動している。

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