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専門家インタビュー:弁護士

仕事を請け負うフリーランスを守る法律はある?契約にまつわる法律の基礎知識vol.1

企業に比べると、どうしても“弱い”と感じることが多い、フリーランスという立場。でもきっと、法律は弱い人を守ってくれる、立場の弱い人の味方になってくれるはず、と思っていませんか?
法律を味方につけて自分を守る方法を具体的に教えてもらおうと、弁護士の日高義允先生にお話を伺いました。

専門家プロフィール
日高義允 Yoshichika Hidaka/弁護士
大学時代、IT分野で起業した友人が法的リスクを乗り越えられず失敗した経験から、システム・アプリ開発等のIT分野に強く、民事と刑事の両分野で経営者を支える弁護士を志す。単なる代理人や法律屋に止まらず、お客様の拠り所になれる「弁護士以上の存在」でありたいと願う。法律事務所アルシエン弁護士。


知っておきたい下請法の適用範囲

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高橋遼さん

僕は主にYouTubeやWebサイトなどの動画をクライアントの依頼を受けて作っていますが、契約でグレーな部分が多いと感じています。


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日高弁護士

僕のお客様にはIT関係、システム開発やWebサービスの方が多く、具体的な作業を下請けに出される企業も多いので、高橋さんのようなお悩みはよくご相談いただきます。
中小企業庁主催の「下請ガイドライン」のセミナー講師も行っていますが、下請けに出す企業向けに「こういうことを守ってくださいね」という内容で話しています。


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高橋遼さん

先生は、僕のクライアントに当たる立場の人たちに講義を行っているんですね。僕は下請法の末端の人間になるので、僕の立場で知っておいた方がいいよ、ということを教えてもらえるとありがたいです。


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日高弁護士

まず前提としてお伝えしたいのは、下請法は適用される取引内容が決まっていること。大量に仕入れたものを納入するような取引には適用されず、オーダーメイド品の作成を委託されるような場面を対象にしています。なので、高橋さんのようなクリエイティブ関係の場合は適用されることが多いです。
もう一つ知っておきたいのが、親事業者、つまり高橋さんにとってクライアントにあたる企業の資本金が1,000万円を超える場合にのみ適用されるということです。

あなたは対等? クライアントとの関係

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高橋遼さん

資本金が1,000万円以下の会社では適用されないんですか?
代わりになる法律はないんですか?


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日高弁護士

ないですね。(注1)


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高橋遼さん

…そうなんですね。拠り所になるはずの法律が適用されないって、すごいデメリットじゃないですか?


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日高弁護士

そういう部分もあるかもしれませんね。下請法では書面の交付義務、つまり契約書を作る義務があるんですが、資本金が1,000万円以下の会社はこの対象ではありません。
下請法が適用される場合は、クライアントが下請法に違反した際、中小企業庁や公正取引委員会に相談することができます。クライアントが特に大きい企業だと、中小企業庁や公正取引委員会から勧告をしてくれることもあります。


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高橋遼さん

でも、下請法に当てはまらない場合は、それができないんですよね。当てはまらない企業で、立場上意見を言いづらい相手に、納期がタイトだとか、成果物に対して対価が安いとか、長時間拘束されるといったキツイ条件を提示されても、泣き寝入りするしかない、ということですか?
法律みたいな、はっきりとした後ろ盾があれば意見を言いやすいと思うんですよね。


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日高弁護士

下請法上、買いたたきが禁止されていて、物を作る時には原価割れしているかどうか見れば比較的わかりやすいです。業務委託や時間給で決まる人間との関係って、相場がはっきりしないことが多いです。契約って、交渉で自由に決められるというのが大前提なんです。とは言ってもパワーバランスがあるから、一定の範囲で制限を加えましょうね、というのが下請法です。


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高橋遼さん

本来は対等に付き合うべき、ということなんですね。


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日高弁護士

原則はそうですね。

注1:取引相手の事業者が資本金1,000万円以下であっても、状況次第で独占禁止法や労働法が適用される可能性はあるが、下請法そのものに代わる法律はない。

提示された条件がキツイ さあどうする?

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高橋遼さん

原則はわかりました。その上で、キツイ条件を提示された時にはどうすればいいのでしょうか。


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日高弁護士

堂々と断ってください。そもそも、仕事を受けないという選択肢があるわけです。
キツイ条件といっても、頑張ればできるレベルのものと、そもそも無理なレベルのものがありますよね。僕が見ている範囲では、そもそも無理な仕事を受けてしまう方が時々いるんです。それは、自分で自分の首を絞めていると思います。


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高橋遼さん

キツイ状況を強いられているのはある意味自分のせいだよ、ということですね。


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日高弁護士

そういう部分もあると言えますね。できない約束はしちゃいけないんですよ。約束したことができなかったら、条件がどうであれ、破った方がいけないことになります。下請法とは関係なく、できない約束はしない、ということが大切です。


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高橋遼さん

でも、クライアントに土日にも普通にスケジュールに組み込まれていたり、「こっちも徹夜でやってるから、深夜でもメールにはすぐ返信してほしい」とか言われちゃうと、断りにくくて無理をしてしまうんですよね…。


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日高弁護士

それ、企業でいったらパワハラの構造ですよ。


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高橋遼さん

そうですよね。でも関係性上、なかなか言えないんです。納品した後、稼働時間を計算したら、最低賃金に満たなかった案件もありますよ。


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日高弁護士

そもそも、最低賃金を割っているのであれば、フリーランスをしている意味がないですよね?


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高橋遼さん

…ごもっともです。でも、現実として、こういうことってあるんですよね…。下請法の適用範囲や、自分自身でしっかり交渉しなければいけないことはわかりましたが、このままではなんだかモヤモヤします(笑)。次回はもう少し踏み込んだ内容を聞かせてください。



次回は、12/15(水)公開予定です。日高先生の「最低賃金を割るような仕事をしているのなら、フリーランスになった意味がありますか?」という問いかけにドキっとした人も多いのではないでしょうか。次回は、じゃあどうすればいいの!?という部分に踏み込んでいきます。

※本記事アップ時点での内容となります。法律や手続き方法、名称などは変更されている可能性があります。

1988年生まれ。2011年に独立、最先端技術からアナログ技術を結ぶクリエイティブを提案。CM、MVなどの商業映像を始め、シネマティックな世界観での映像表現を追求。海外のフィルムフェスティバルでの受賞など、映像作家としても活動している。

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