専門家インタビュー:社会保険労務士
勤め先にどう伝える? NG事項は? 複業クリエイターの保険と労務vol.2
会社員としてキャリアをスタートしたけれど、個人としての仕事の依頼が増えてきたーー。
そんな流れで開業を考え始めた時に気になるのが、「会社にどう説明するか」。
避けては通れない勤め先とのコミュニケーションについて、社会保険労務士の神谷淳先生に伺いました。
専門家プロフィール
神谷淳 Jun Kamiya/社会保険労務士
新卒で金融機関に入社、不動産管理会社へ出向。退職後に社会保険労務士試験合格。中小企業で卸の営業を経験後、社労士法人に勤務。2017年に「社会保険労務士 神谷事務所」として独立開業。
目次
複業を考え始めたら、まず会社の就業規則を確認
わたしは入社時から希望を伝え、会社の理解を得て複業をしていますが、会社員になってから複業を始めたいと思った時に勤務先と話し合っておくべきことについて教えてください。
今は社会全体が複業OKの流れになりつつありますが、自分はどうなのか、最初に確認してください。具体的には、就業規則を確認する必要があるでしょう。
就業規則を確認してOKだったら、あとは自由にやっていいのでしょうか。
職業選択の自由があるので、自由といえばそうなのですが、会社の労務部門からすると、そう簡単ではない面があります。
従業員が他の場所で収入を得たり、雇用されている場合、会社はそれを把握する必要があるんです。個人事業主だけでなく、他社でのアルバイトも含む雇用など、いずれも場合も勤め先に申告してください。
そうなんですね。認められない訳ではないけれど、黙っていると問題があるということですね。
特に2か所以上で雇用される場合は、労働時間管理や社会保険加入の問題があるので注意が必要です。アルバイトのかけもちなどもそれにあたりますね。
柴山さんのように、複業の片方が個人事業や業務委託の場合はそんなに問題はありませんが、それでも会社には実態を申告しておいたほうがいいでしょう。
正直、内緒にしてたらどうなる?
ですが、中には複業のことを会社に言い出せない人もいると思います。
特に、最初は会社員だったけど、個人的な依頼が増えてきて開業した、という場合は言いにくいですよね。もし言わないでいるとどうなりますか。
就業規則で複業が認められてなければ、懲戒か、最悪の場合は解雇もあり得ます。
なかなか厳しいですね…。ちなみに、秘密にしていた複業が会社に見つかる可能性としては、どんなケースがあるんですか。
一番気づかれやすいのは、住民税ですね。所得の割に住民税が高いと思われてしまう可能性はあります。
とはいえ、複業が一般化するにつれて、企業のスタンスも変わってきています。個人の働く権利を認める考え方に、徐々になりつつあると思います。
同じ内容の業務は「競業避止」にあたる場合も
そういう流れがありつつも、事業内容によっては「競業避止」にあたる場合もあるので注意が必要です。
競業避止って初めて聞きます。どういうことですか。
会社から認められていないのに同じような業務につくことです。
本来会社を通して受けるべき仕事を個人で受けられてしまうのは、会社にとっては大きなリスクですから、そこを回避する狙いがあります。
開業だけでなく同業種への転職なども、会社や業種によっては制約があったり、禁止されていることもあります。
会社でキャリアを積んだ後に独立するのはよく聞く話ですが、それが難しい場合もあるということですね。
個人に働く権利があるように、会社側にも事業を守る権利があります。
上手に独立するためには、やはり会社側としっかり話し合うことが必要ですね。
どちらの言い分が法的に認められたとしても、こじれてしまうと自分も会社も幸せではないですものね。言いにくくても正直に話すことが大事だとよくわかりました。
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次回は9/29(水)公開予定です。結婚や出産を考え始めると気になってくるのが時間とお金の問題です。フリーランスならばなおさらのこと。子育てしながら働く時の、制度の活用や注意点について、引き続き社会保険労務士の神谷淳先生に伺いました。続きをお楽しみに。
※本記事アップ時点での内容となります。法律や手続き方法、名称などは変更されている可能性があります。